◆日光東照宮の由来
徳川家康は、「私が死んだら、まず、久能山に納め、神として祭るようにしなさい。
葬式は増上寺で行い、三河の大樹寺に位牌を立てなさい。
一周忌が過ぎたら、日光山に祠を建てなさい。
関東八州の鎮守となるだろう。」と、遺言しました。
豊臣秀吉は、死後、京都の豊国神社に祀られ、神として崇められていました。
徳川家康も、死後も神として崇められたかったのかもしれません。
また、徳川幕府の将軍の先祖は神様となり、幕府の権威を揺るぎないようにしようとしました。
家康の死後、静岡市清水区の久能山に葬られ、その後、徳川・松平氏の菩提寺である大樹寺に位牌が納められました。
同時に日光山に神社の建立が始まりました。
日光は、奈良時代、現在の男体山である二荒山(ふたらさん)に登った勝道上人が開いた山岳信仰の本拠地で、関東武士の尊崇を集めた場所です。
820年、弘法大師空海が入山し、二荒山に音読みの「にこう(日光)」という山号をつけて以来、日光と呼ばれるようになりました。
二荒山には、現在、二荒山神社が建っています。
この神社は、鎌倉幕府を開いた源頼朝も崇敬していました。
しかし戦国時代になり衰退してしまったのです。
源氏の末裔と称して東国をまとめ、天下統一を果たした家康は、源頼朝を尊敬していました。日光東照宮の祭神は徳川家康ですが、相殿に豊臣秀吉と源頼朝が祀られていることからも、家康が頼朝を尊敬していたことがわかります。
1613年には、家康の側近であった天台宗の僧・天海を日光山の貫主に就任させ、日光の再興を計画しています。
家康は、自身が日光に鎮座することで、日光を発展させようとしたのかもしれないですね。
◆道教・陰陽道の影響
日光東照宮は陰陽道の影響を強く受けています。
境内にある主な建物を結ぶと北斗七星が浮かび上がります。
また、鳥居、陽明門、唐門、本殿を結ぶ線の北側には北極星があり、南側には江戸の町があります。すなわち、江戸のほとんど真北に建立されているのです。
北極星は、古代中国の道教では至上の神と考えられていました。
これを北辰信仰と言います。
そして、道教の影響を受けた陰陽道が発生すると、北極星の回りを回る北斗七星も、長寿や豊かさを支配する星として信仰されます。
カシオペアが登場しないのは、何かさみしいですね。
だから夜になると日光東照宮陽明門の真上に常に北極星が輝くのです。
中国の皇帝のように、北極星を背に国家や江戸を守ろうとしたわけです。
◆新厩舎の三猿
日光東照宮と言えば、見ざる、聞かざる、言わざるを表した三猿が有名です。
神厩舎(しんきゅうしゃ)は、神様に奉納された神馬(しんめ)を飼う厩(うまや)です。有名な神社では本物の馬が飼育されています。
ちなみに、経済的に馬を飼育できない神社には、代わりに絵馬が奉納されています。
この神厩舎の長押(なげし)に猿の彫刻が施されています。
これらの猿の彫刻は、人の一生が風刺されています。
① 子猿の将来を眺める母猿
② 子供時代、悪い事を見たり、言ったり、聞いたりせず、素直に成長しようと教える三猿
③ 独り立ちを図る猿
④ 立身出世を暗示する青い雲がある空を見上げている猿
➄ 挫折した仲間を慰める猿や崖っぷちに立つ猿は、仲間や身内が支えてくれるから、苦境を乗り越えることが出来ることを教えています。
⑥ 猿も恋に悩む
⑦ 人生の荒波を乗り越える新婚の猿
⑧ 身ごもった母猿は、やがて子猿の将来を眺めるでしょう。①に戻るわけです。
猿が馬の守り神であるという厩猿(うまやざる)信仰に基づき、厩に猿の彫刻が施されています。
厩猿信仰は、インドから中国を経て鎌倉時代に日本に伝えられ、陰陽道と共に合理的に理解され、陰陽道の五行思想で馬と猿が関連づけられます。
◆謎の眠り猫
猿以外にも猫が日光東照宮では有名です。
眠り猫と呼ばれる猫の彫刻が東回廊の霊廟入り口(奥宮入り口)にあります。
不浄な物はネズミ一匹であっても通さないという意味があります。
しかしこの彫刻の裏には二匹の雀の彫刻が施されており、江戸の町が猫が雀を追いかけないくらい平和になるよう願われたためとも言われています。
この眠り猫の彫刻の意味は現在も謎なのです。
◆陽明門の柱
陽明門には1本だけ逆さまの柱があります。
建物は、完成と同時に老朽化が始まります。
この老朽化を避けるためには、建物を完成させなければよいというトンチンカンな縁起担ぎによって逆さまになっています。
つまり陽明門は現在も建築中で、老朽化はまだ始まっていないのです。
◆日光東照宮の基本情報
住所:栃木県日光市山内2301
電話番号:0288-54-0560
アクセス:JR日光駅・東武日光駅より東武バス「中禅寺温泉」または「湯元温泉」行きに乗り「神橋」で下車、徒歩8分。
車の場合、東北自動車道宇都宮ICから日光宇都宮道路を経て、日光ICで下りる。日光ICから2km。
日光東照宮 公式サイト
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