◆比叡山延暦寺の三塔について
比叡山延暦寺は天台宗の総本山で、東塔(とうどう)、西塔(さいとう)、横川(よかわ)の3つのエリアに分かれています。
奥比叡山ドライブウェイは、坂本ケーブルで延暦寺駅から北方向に東塔(とうどう)、西塔(さいとう)、横川(よかわ)の順に通っています。
これらを三塔と呼んでいます。
三塔にはそれぞれ中堂があり、三塔の中でも東塔が比叡山延暦寺全体の中心です。
また、青龍寺(せいりゅうじ)がある黒谷、安楽律院(あんらくりついん)がある安楽谷を二別所と呼んでいます。
現在の比叡山延暦寺は、1571年の信長による焼き討ち以降に再建されたものです。
建築史学者の海野聡氏は詳細に比叡山延暦寺の復興を調査しました。
この研究を参考にして復興過程を記します。
① 豊臣家・徳川家による復興(元亀~寛永11年)
信長が生きている間は、比叡山延暦寺の再興は行われませんでした。
信長の死後、豊臣家と徳川家により復興が始まりました。この復興により、西塔、横川では主要建物の多くが再建されました。
東塔は、根本中堂や戒壇院の仮堂が建てられた程度でした。
② 徳川家光と天海による復興(寛永11年~延宝年間)
東塔は仮のお堂が建てられていましたが、寛永8年、暴風に会い、ほとんどの建物が倒壊していました。
この状況を嘆いた天海というお坊さんが、時の将軍・家光に東塔の再建を要請しました。
根本中堂、大講堂、文殊楼などの東塔の堂舎が、幕府の力で再建されました。これを御用作事といいます。
また、東塔だけではなく、すでに整備されていた西塔や横川を含む三塔のお坊さんの修業の場である伽藍が復興されました。
③ 御用作事による維持管理体制の確立(天和~18世紀)
主な建物の整備が完了した後、周辺の建物が復興されていきました。
西塔や横川の鐘楼、赤山宮などのやや小規模な建物、椿堂、山王院、不動堂といった各塔の下部組織の本堂が建築されていきました。
また、徳川幕府による御用作事が続くことで、主な建物の修理基盤が構築されました。
◆比叡山延暦寺の由来・伝教大師最澄について
奈良時代、南都六宗という仏教集団が奈良にありました。
最初は真面目に仏教を学んでいましたが、次第に堕落していきました。
堕落の原因は、正式な僧であると認める戒壇という特権によるものでした。
正式な僧になるためには、奈良の南都六宗の門下に下らなければならなかったのです。
そのため南都六宗に僧が増え、政治的権力が大きくなったです。
この仏教集団の政治権力を避けるため、桓武天皇は奈良の平城京から京都の長岡京に遷都しました。
さらに一旦は仏教を取り入れましたが、仏教を禁止することも考慮しました。
この桓武天皇の前に優れた才能を持った最澄が現れたのです。
桓武天皇は南都六宗の勢力を低下させるため、最澄と南都六宗との論争を計画し、最澄を遣唐使として唐に派遣し仏教を学ばせました。
最澄は、南都六宗と論争するため、天台智顗のもと顕教を学びました。
唐の仏教は密教が主流で、顕教は一昔前の隋の時代の仏教でした。
ちなみに、顕教とは秘密にされず、公に顕された教えの事で、密教は秘密とされてきた教えを言います。
唐から帰国した最澄は、南都六宗の仏教は三乗であり、三乗の教えは一乗の教えに導くための物にすぎないと因縁を付けました。
南都六宗の僧は唐で仏法を学んでいないので、全く反論できませんでした。
また、朝廷は最澄に戒壇の特権を与え、最澄は比叡山に延暦寺を築き、弟子を正式な僧として認める教育機関を作りました。
こうして、比叡山延暦寺の勢力が強くなり、南都六宗は衰退していきました。
◆天台密教(台密)
最澄は、主に禅の前身となる止観や浄土宗系の前身となる念仏を含む顕教を学び、密教はかじる程度しか学びませんでした。
最澄と同じ遣唐使には弘法大師空海が乗っていました。空海は密教を完璧に学んできました。
最澄は空海に密教経典を借りようとしましたが、空海はこれを拒みました。
また、最澄の弟子を空海のもとに送り、密教を比叡山延暦寺に取り入れようとしましたが、
空海のもとに送られた最澄の弟子は空海に丸め込まれ、比叡山延暦寺に戻ることはありませんでした。
このように最澄と空海は対立しましたが、最澄は空海に勝てなかったのです。
その後、最澄の弟子の第3代天台座主の円仁(慈覚大師)や第5代天台座主の円珍(智証大師)により、天台宗は独自の密教を確立しました。
◆様々な鎌倉仏教を輩出
比叡山延暦寺はたくさんの鎌倉仏教の開祖を輩出しました。
浄土宗の開祖・法然、浄土真宗の開祖・親鸞、臨済宗の開祖・栄西、曹洞宗の開祖・道元、日蓮宗の開祖・日蓮を輩出しています。
これは、最澄が学んできた顕教によるものです。このように比叡山延暦寺は日本仏教のゆりかごと称してもよいでしょう。
◆比叡山延暦寺の基本情報
住所:滋賀県大津市坂本本町4220
電話番号:077-578-0001
比叡山 延暦寺 公式サイト
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