清水寺/ 京都

清水寺

清水寺は、広隆寺、鞍馬寺のように、平安京が出来上がる前から京都にあったお寺です。
また、日本でも有数の観音霊場にもなっています。

清水寺の由来

奈良時代に奈良県高市郡高取町に子島寺という法相宗の寺があり、賢心(延鎮)というお坊さんが居ました。
仏教は朝廷と結びつき政治的権力を増していることに延鎮は否定的でした。

ある日、延鎮は霊夢を見ました。
枕元に白衣の仙人が立ち、「南を去り北に清らかな水を求めよ」と告げました。

夢に従い奈良から北上すると、宇治川の北側に黄金色の水の流れを見つけました。
この流れを遡ると、鴨川の支流の音羽川に金色の水の源がありました。
これが音羽の滝です。

音羽の滝

この滝に夢に出てきた白衣の仙人が立っており、「我が名は行叡という。この地で200年修業した。心に観音を念じながらお前が来るのを待っていた。観音力を封じた霊木を授けるから、この木に観音像を刻み、寺を開け」と言いました。
そして行叡はどこかに飛び去りました。

これが清水寺の由来で「清水寺縁起」に書かれているものです。
しかし、今昔物語集など約7冊の本に類似した由来があり、それぞれ少しだけ話が異なっています。

清水寺

坂上田村麻呂の私寺

延鎮が修業をしていると、一人の武将が現れました。
身籠った妻のため、安産に効く鹿の胎児を求めていると言いました。
延鎮は、新しい子の誕生のため殺生をするのはよくない、観音様にすがるべきだと武将を諫めました。

延鎮の言葉に感動した武将は、妻のもとに行き観音様にすがろうと決めました。
夫婦に男の子が生まれると、武将は歓び、延鎮に寺の建立に協力したいと願い、仮本堂を建立し、金色の十一面千手観音像を寄進しました。

この武将は、後に征夷大将軍にまで出世する坂上田村麻呂でした。

御本尊・観音様について

観音様は、観世音菩薩の略で、梵語では、アバロキテシュバラ・ボディサッタバと言います。鳩摩羅什は、観音経(妙法蓮華経普門品二十五)を訳した時、観世音菩薩としました。
世の全てを観、音を聞き救う存在という意味です。

これに対し、玄奘三蔵は観自在菩薩と訳し、世を観て自在に対応してくれる存在としましたが、もともとは同じです。

観世音菩薩は衆生を救うため、状況に応じて33の姿に変身します。

仏、辟支仏(びゃくしぶつ)、声聞(しょうもん)、梵王身、帝釈(たいしゃく)、自在天、大自在天、天大将軍、毘沙門、小王、長者、居士(こじ)、宰官、婆羅門、比丘(びく)、比丘尼、優婆塞(うばそく) 、優婆夷(うばい)、長者婦女、居士婦女、宰官婦女、婆羅門婦女、童男、童女、天、竜、夜叉(やしゃ) 乾闥婆(けんだつば)、阿修羅、迦楼羅(かるら)、緊那羅(きんなら) 摩睺羅伽(まごらが)、執金剛の33身です。

では、十一面千手観音とは、どのような仏様なのでしょうか。

十一面観音は、地獄、餓鬼、畜生、修羅、人間、天上の六道において、修羅道に居る人を救済します。
現世において、徐病、滅罪をなし、福を求める現世利益の祈念仏とされています。
千手観音は、六道において地獄道の苦悩から救済し、諸願成就、産生平穏を司ります。
この十一面観音と千手観音の功徳が合わさっているわけです。

そして、清水寺の観音様は秘仏になっており、仏の神秘性を高めています。
通常、拝まれる観音様はお前立ちといい参拝されるための本尊を模して製作したものです。

清水寺

舞台の起源

清水寺のランドマークになっている清水の舞台ですが、清水寺によく参拝した清少納言が書いた随筆・枕草子を読んでもその存在が出てきません。
ところが、義経記にはしっかり出てきます。

どうして、清水の舞台が造られたのでしょうか。
詳細な事は分かっていませんが、枕草子には清水寺観音縁日を「さわがしきもの」と称しており、清水寺はかなり賑わっていたことがわかります。

清水寺 狛犬

もともとの本堂も狭すぎたのではないでしょうか、本堂拡張が図られたと推定されます。
本堂の背後には産土神で鎮守社の地主神社があります。
本堂を拡張しようにも平坦な土地がないのです。

山の中腹に造られた清水寺では、平坦な土地が貴重だったのです。
古墳跡と推定されている鹿間塚のような平坦な土地は、田村麻呂が殺めた鹿を懇ろに弔らったので数百頭の鹿が地面を踏み固めたという伝説が出来る具合です。

本堂を拡張するためには、南側の崖の上に平らな部分を作るしかなく、少しずつ現在のような舞台が拡張されていったのではと推定されています。

決して飛び込むために舞台が造られたわけではないのでご安心ください。

法相宗とは

清水寺は、もともと法相宗のお寺です。
一時、真言宗となってしまったこともありますが、現在は法相宗から独立し、独自の北法相宗という宗派の大本山になっています。

この法相宗とはどのような宗派なのでしょうか。
実は、本尊の観音様とは全く関係がありません。
インドの世親(ヴァスバンドゥ)兄弟が提唱した唯識思想(唯識派)を伝える寺なのです。

少し難しいのですが、人や物が存在するのは心があるからで、心がないと人も物も存在しないのです。
なぜなら、人がいると認識するのは心による働きであり、心が持つ認識というプロセスを経ないと人や物は存在しないのです。

認識論から論が発展していき、認識は意識だけでなく無意識にも作用するという無意識の存在を説きます。
そして、意識だけでなく無意識の浄化も強調します。
唯識派は、無意識の浄化のためには、瞑想やヨーガが大切と説くわけですが、法相宗ではヨーガや瞑想までは行いません。
心をキレイにしましょうと説いています。

世界遺産にも登録されている清水寺へぜひ一度お立ち寄りください。

清水寺 世界遺産

音羽山清水寺の基本情報

住所:京都市東山区清水1丁目294
電話番号:‪075-551-1234‬‬
アクセス:
・JR京都駅からバス乗車「五条坂」下車徒歩10分
・阪急「河原町駅」から徒歩28分
・京阪「祇園四条駅」から徒歩24分
清水寺 公式サイト