◆奈良仏教と東大寺
東大寺は、聖武天皇により建立された奈良仏教の寺院です。
聖武天皇は、国分寺と国分尼寺を地方の国府近くに建立し、これらの寺を通して中国の優れた文化を広めました。
東大寺は、国分寺と国分尼寺を統轄する寺として建立されたのです。
東大寺建立後、奈良仏教も東大寺により統轄されました。
奈良仏教は、奈良時代に平城京を中心に発展しました。
しかし、平安時代以降、天台宗と真言宗の発生により衰退していきました。
現在はあまり普及していない宗派がある、というより残存しているのです。
南都六宗には、三論宗(さんろんしゅう)、成実宗(じょうじつしゅう)、法相宗(ほっそうしゅう)、倶舎宗(くしゃしゅう)、華厳宗(けごんしゅう)、律宗(りっしゅう)という宗派に分かれていました。
奈良時代、これらの宗派は現在の仏教宗派とは異なり、数か所にお坊さんが集まって仏教の研究をしていた集団の名称でした。
律令体制のもとで国家の庇護を受け仏教の研究を行っていました。
宗教団体というよりも研究機関と言った方がよいでしょう。
国家のため呪術的祈祷を行っていましたが、仏教の研究内容とは全く異なります。
呪術的な祈祷方法を雑密と言い、国家のために祈祷することを「鎮護国家」と言います。
仏教は、伝来当初は大陸の優れた学問、国家を安定させる方法と見なされていたのです。
現代とは全く異なりますね。
誤解のないように付け加えますが、現在は華厳宗という宗派の総本山となっています。
◆奈良の大仏
国を護る方法が記された経典である金光明最勝王経には、仏教を信じる国には仏教の護る護法善神の四天王という神様が現れ、国を護ってくれると説かれています。
そこで大きな仏像を建てて国を守ってもらおうと考え、752年に奈良の大仏が建立されました。
当時は、天然痘が猛威を振るい、飢饉や地震がたびたび起こり、さらに九州で藤原広嗣の乱が発生し、不安定な社会だったのです。
大仏と大仏殿は、建立後、1180年と1567年に焼失し、その都度、時の権力者により再建されています。
奈良時代から残っている部分は、土台のみで、後は再建されたものです。
◆正倉院
正倉とは、奈良・平安時代の官庁や大きな寺に設置された、穀物や重要な物品を収納しておく建物です。
また、より大きな正倉は、ある区画に複数の正倉が築かれ、塀などで囲まれた区域になりました。このような大規模な正倉は正倉院と呼ばれました。
東大寺の正倉院も昔は数棟の正倉から成っていました。
現在は最大の正倉が1棟だけ残り、これが東大寺正倉院宝庫です。
◆東大寺の見どころ
南大門
創建時の門は、平安時代に大風で倒壊しました。
現在の門は、鎌倉時代、大寺中興の祖として知られる重源上人が再建したものです。
東大寺は、平安時代に火災や落雷で一部の建物を失っています。さらに、平重衡(たいらのしげひら)による南都焼き討ちのため、大仏殿を含め多くの建物が焼失しました。
鎌倉時代に、重源上人は朝廷から東大寺再建のリーダーに選ばれ、大仏、大仏殿などが再建されました。
この時に南大門も再建され、鎌倉時代の天竺様式という建築様式を現代に伝えています。
また、南大門には運慶や快慶が造像した有名な金剛力士立像が安置されています。
中門
中門は、江戸時代中期に再建されたと推測されています。楼門の両脇に、仏法を守護する護法善神・四天王(持国天・増長天・広目天・多聞天)の中の二天を拝しています。
左は持国天、右は多聞天です。
中門は通常は閉ざされており、元日の0:00〜8:00だけ通ることができます。
法華堂(三月堂)
奈良時代に建てられた東大寺最古の建物です。
東大寺の前身である金鍾寺の遺構と言われています。
正面の礼堂は、鎌倉時代に重源上人により増築されたものです。
異なる時代に建てられた2つのお堂が美しい調和を保っています。
二月堂
「お水取り」と呼ばれる修二会が、このお堂で旧暦の2月に行われたことから、二月堂と呼ばれています。江戸時代の修二会中に火災にあい、現在のお堂は2年後に再建されたものです。
戒壇堂
戒壇堂は、正式に朝廷から認められたお坊さんとしての資格を与える場所です。
有名な四天王像のお堂としても知られています。
仏教伝来当時は、中国に行き戒律を授かり、正式なお坊さんになっていました。
鑑真が来日し、この戒壇を造り、聖武天皇、妻の光明皇后(こうみょうこうごう)、孝謙天皇(こうけんてんのう)など、約440人に戒律を授けました。
◆東大寺の基本情報
住所:奈良市雑司町406-1
電話番号:0742-22-5511
アクセス:JR大和路線・近鉄奈良線「奈良駅」から市内循環バス「大仏殿春日大社前」下車徒歩5分、または近鉄奈良駅から徒歩約20分
URL:http://www.todaiji.or.jp/
http://shosoin.kunaicho.go.jp/
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