深大寺 / 東京

深大寺

深大寺の由来

「深大寺縁起絵巻」によれば、深大寺の由来は次のようになっています。

奈良時代に、武蔵国多摩郡狛江(佐須の里)に、1人の右近という名の猟師がいました。
ある日、右近のもとに、虎という美女が現れました。
彼は、美女に求婚します。
殺生をせず、猟師を辞めることを条件に、ふたりは夫婦となりました。
その後、一人の女の子を授かりました。

女の子が、十二・三歳になった時、福満という童子が現れました。
福満は、少女を好きになり、恋文を何通も送り、ついに逢うことができました。

ところが、父母はこの恋を許しませんでした。
大切なひとり娘なので、池の中の島に家を建て、娘をそこに隔離しました。
彼は、島に渡る舟を持たなかったので、深く悲しみました。

すると深沙大王が現れました。
福満童子は、大王に島に渡りたい願いを伝え、その願いが叶えば大王を池の主とし、村の鎮守として祀ることを誓いました。

深沙大王は、大きなる亀を水面に浮かべ、童子をその亀に乗せ、娘のいる島へと渡したのです。
父母は、これに驚き、福満童子を娘の婿とました。

福満童子と娘は、一人の男の子を授かりました。
この子は、幼くして仏門に入り、唐に渡り大乗仏法を習得後、故郷に戻り、満功上人と名乗り、深大寺を開きました。

この恋物語により、深大寺は縁結びの寺としても有名です。

しかし、この話は江戸時代に、経典などから学んだ洪水や水害に関する神仏の説話を門弟に伝えるため、天海僧正が作ったものなのです。

深大寺

もともと深大寺は奈良仏教の法相宗でした。
その後、天台宗に変わり、関東の大きな台密道場になっていきます。
奈良時代の法相宗の寺は、仏教を学問として学ぶため、国家を鎮護するために建てられたのであって、ある仏教の神様を祀るために建てられることはありませんでした。
そういう理由で上述の由来は少し違和感があるのです。

そこで、以下のように考えてはいかがでしょうか。

この地域は湧き水が多かったので、神社を作って水神を祀りました。
水の神なら通常は蛇が祀られます。
大蛇から神蛇(しんじゃ)、神蛇から深沙(じんじゃ)と変化していき、神仏習合により深沙大権現が祀られるようになり、ついには寺になったのです。

こう考えると何も問題がありませんが、これを裏付ける文献などは、火災により全く残っていません。
青渭神社(あおいじんじゃ)は、武蔵国多摩郡にある神社で、延喜式神名帳にも記載されています。
奈良・平安時代の青渭神社は、稲城市東長沼青渭神社、調布市深大寺、青梅市沢井青渭神社のいずれかであろうと言われています。
深大寺は、もともと水の神を祀る青渭神社であったのかもしれません。

深大寺

渡来人との関係

深大寺は、渡来人と深い関係がある寺です。

冒頭でお話しした深大寺の由来に登場する福満、その義父・右近は高麗百済の渡来人と考えられています。
深大寺の南東に虎狛神社がありますが、これは右近の妻・虎を祀ったもので、この神社の別当が住んでいた別当寺である祇園寺(ぎおんじ)は、満功上人が最初に建てた寺で、境内には朝鮮の石像があります。

◆祭神について

深沙大王は『大般若経』の守護神ですが、元々は鬼神で、タクラマカン砂漠を流れる河で旅行者の命を奪う蛇神でした。

7世紀、唐に玄奘(げんじょう)三蔵法師と僧がいました。
玄奘は天竺(インド)から唐に伝わった仏教をさらに詳しく知るため、天竺に旅に出ました。この旅は、険しい山を越え、タクラマカン砂漠で水不足で死にそうになったり、山賊に襲われたりしました。
命懸けで天竺に到達した玄奘は、『大般若経』などの膨大な仏教経典を唐へ持ち帰りました。

この帰路の途上、タクラマカン砂漠を歩いていた玄奘一行は飲み水が尽き、死にそうになりました。
そこに首にドクロのネックレスをした恐ろしい姿の深沙大王が現れました。

「輪廻転生において過去6世代、ずっと玄奘は高僧であり、中国から天竺に渡り、多くの経典を持ち帰ろうとしましたが、その都度、深沙大王は砂漠で法師の命と経典を奪ってきました。
首に掛かっているドクロは、過去六世の法師のものです。
七度目に法師は、過去六世よりも多くの経典を持ち帰っている事に気が付き、ようやく法師の情熱を理解でき、過去六世に渡り法師の命を奪い続けたことを悔いている。」と告げました。

これ以降、深沙大王は大般若経を護る守護神になりました。

西遊記の沙悟浄(さごじょう)は、深沙大王がモデルになっています。

その他の深大寺名物

深大寺そば

深大寺だるま市・・・厄除元三大師大祭(やくよけがんざんだいしたいさい)」といい、比叡山中興の祖・慈恵大師をたたえる縁日として、江戸中期頃に始まりました。

深大寺そば・・・深大寺周辺の湧き水を利用し蕎麦を打ち始めたことに由来します。

深大寺鬼燈まつり(ほおずきまつり)・・・提灯に見立てたほおずきを並べ、精霊を迎える。

深大寺ほおずきまつり

深大寺の基本情報

住所:東京都調布市深大寺元町5丁目15-1
電話番号:042-486-5511
アクセス:京王線調布駅、つつじヶ丘駅、中央線・総武線吉祥寺駅、三鷹駅から「深大寺」または「深大寺小学校前」までバスで移動。徒歩1分。
深大寺 公式サイト